2022
12.16

カニバリズムは起こらない

Intelligence

紙書籍電子書籍は全く別物、という感覚は制作現場にいるから得られるものなのでしょうか。
そんなことはなく、ご購入頂いているユーザーもその感覚なのかしらん。

考えてみればこの「別物」という感覚の方が不思議で、書かれて(描かれて)いる内容は一緒なのだから、むしろ「同じ物」という認識が正しい筈なのに、と思うこともあります。

紙書籍の読書体験は身になるが電子書籍は記憶に残りにくい」のような、ちょっと電子書籍が悪者っぽく言われるような意味ではないですよ、「別物」と申し上げているのは。

違うなぁ…と感じる一例として、最もわかりやすいのはやはりコミックかな、と。

紙でコミックを買う。
包装ビニールを剥がしてカバーの触り心地や色合いを楽しんで、ちゃんと表紙もチェックして。
表紙のチェックを忘れてはいけないですよね、本編の補足情報とか四コマバージョンとか、楽しめる工夫がされているものがとても増えましたので。

で、読む。
自分のペース、自分だけの世界。
夢中になればなるほどどんどん猫背に。
一つ一つの描写を余すところなく愉しもうとして前傾していくのかも。
稀に書き文字部分に何が描かれているか上手く読み取れないことがあって、一生懸命解読しようとしてみたり。

とても読書的読書(賛否ありますが、コミックも読書と呼ぶ派です)で、情緒的で、ノスタルジックで、何年経っても、ふとしたきっかけで読書体験としてしっかり思い出せる読み方です。

紙書籍の魅力はそういうところにあると思います。
子供の頃は「電子書籍」という言葉がなかったので(そういった向きはあったのでしょうか、知らなかっただけかな)比較できませんでしたが、今は紙と電子での「読書体験」を比較できるので、違いが「気付き」として自分の中に定着してゆく感覚があります。

あの頃に読んでいたコミックは、今でも思い出しては検索したり、買い直したりしています。
・・・当時大好きだった少女マンガが、今なぜか「BL」にカテゴライズされているのを見て驚愕でしたが(作風のせいかなぁ)。

そんなこんなで、紙コミックは「自分から向かって行く」「出会ってハマれば生涯愛し続ける」みたいな、肉食女子恋愛系イメージです(語彙力の雲行きが怪しくなってきました)。

電子書籍としてのコミックは、無限に可能性を秘めたコンテンツとしての要素が強いと毎日思っているので、「この作品はどう見せるのが最も魅力的か」とか、一番見せたい場面を目立たせたりアピールしたりする方法がたくさんあって、それが上手く使われているかどうかの方に注目してしまいます。

紙コミックのヒキとメクリのような考え方が取り払われて、タテヨミコマ配信を多く見かけるようになりました。
一冊丸々というよりは、「話」ごとに分冊配信されたりとか。

じっくりと読み込む性質から、スピード感重視、隙間時間有効活用、印刷物ではないことの強みを活かしてフルカラー化などなど。
そういった派手さとモーメンタリな要素を持ったものへ変貌を遂げていると感じます。

該当作品の最も刺激的な一コマ、目を引きやすい場面を切り取ってアドバタイズメントとして拡散する方法を大変よく見かけるようになりました。

そういった広告を目にしてはまんまと読みたくなってしまうタイプなので、Ad経由で電子書店へGo!そしてコミックの海にダーーーイブ。
押し寄せるたくさんの情報を堪能しながら、良き作品との出会いに期待する(もちろんAdで目にした作品読みます)、という、そういう楽しみ方の比重が大きい印象です。

好きなジャンル以外の作品も目に入りやすいので、新たな嗜好の開拓にもなり、そういった充実感を得やすいところが魅力的です。

アピール上手で経験値の高い人にリードしてもらっている」感覚というのでしょうか(絶対違うwwwww)。
手を引かれて誘(いざ)われていくような。
その時その時でホットな話題や作品に注目させるのが得意なのが、電子版のような気がします。

――何をどう読みたいか
――作品との出会いを探しているのか
――ランダムに情報を仕入れたいのか

読み方の好みや目的によって、紙なのか電子なのか、「巻」なのか「話」なのか、カラーなのかモノクロなのか、版面なのかコマ配信なのか。

組み合わせ方で同じ作品でも、違う印象を受けます。
コマ配信だと緩急を感じないので単調に見えがちですが、版面なら小さくされるであろうコマも「一つ」としてきちんと大きさを確保して表示されるので、読み飛ばしてしまったり読みにくかったりすることが減ります。

そういった数々の違いから、
――紙の方が良い
――これからは電子の時代だ
――紙が売れていれば電子化する必要はない
――電子で売り始めると紙が売れなくなるんじゃないのか
といった「どちらが優れているかを決めたがる」論調に意味はないなとつくづく思うのです。
相乗効果こそあれ、どちらかがどちらかを食い散らかすようなはしたないことにはならないでしょう、と。

コミックに限らず、です。
実用書やPC書、プログラミング書やハウツー本、小説、大人向け(子育て用)絵本に至るまで、有難いことに多くのジャンルの多数の一般書籍を電子書籍にさせて頂いておりますが、紙書籍の焼き直しをしているという感覚ではありません。
(勝手に作り変えてるとか、そんな恐ろしい意味ではないですよ・・・!)

理由や意図があって作成されたレイアウトやデザイン、図表やイラストの配置でしょうから、なるべくそのままの位置や見た目で制作、というのを大前提にしています(紙書籍が先に存在している場合)。
が、同時に「文章と画像が離れていると電子書籍ではお互いに何を指しているのかわかりにくくなってしまう」「注記の位置を調整したほうが混乱を招かないで読める」などなど、ユーザビリティを優先させ、紙書籍とは少々異なったデザインになる部分も当然出てきます。

それぞれの長所を活かすことは、もう一方の短所を補うことにも繋がりますので、状況に応じ便利な方、ユーザーの事情に合う方、気に入れば両方を買う。
読み方の選択肢が広がっていきます。

電子書籍が世に出始めた頃・・・をいつと捉えるか難しいですが、世界初の電子書籍は1971年だったとか、そこまで遡るわけではなく・・・アメリカでさえ、Kindleが普及するまでは電子書籍への風当たりは強く、反対派が少なくなかったそうで・・・「電子書籍が売れると紙書籍が売れなくなる」というカニバリズム論が強かったからなんですね。
今でもまだ、まーだ、日本ではそういう声が聞こえてくることもあるくらいですが、それぞれの存在の目的や市場が良い意味で異なるので、同族で食い合うことはない、というのがこの10年で、ワタクシが体感してきたことです。

前回のブログで代表が内外に向け、今後の展望を語りました
それを受け、やや観念的ではありますが、自分達は何かを食い潰すものを作っているのではなく、広がりと希望のあるコンテンツ事業を展開しているよ、ということを振り返る回と致しました、今回のブログ。

決して、カニバリズムという厨二ワードを使いたかったから、タイトルから内容を捻り出したわけではございません。

前回、面白がって画像を散りばめ過ぎたので、今回は読み物文字もの風のブログとしました。
さて、画像が全くないと見事に淡々とした雰囲気ですが、悪くないですね。
ワタクシ広報が、実はエレガント系列種族だということもなんとなく伝わったのではないかと存じます。

本日もお読み頂き有難うございました

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