2022
08.09

アクセシビリティ対応の電子書籍制作ガイドラインが纏められてから7年。「読める」けど「使えない」を変えていくために――

Intelligence

当社はリフロー型の電子書籍制作を得意としています、ということを、機会があれば発信しています。

このHPは営業的な内容を前面に出さず(「グリープが選ばれる理由」とか「こういった書籍ならX円です」といった情報をほぼ出してないんですよー(^▽^))、どのように何を積み上げてきたか、これからどんな電子書籍を制作していこうとしているか、電子書籍を軸にコンテンツ制作全般を担いリードしていく気構えや、実行に向けた検証の内容等々をオープンにすることに重点を置いています。

なので、「リフロー型の電子書籍ならうちにお任せください!」と大々的に書いてはいませんが、それってつまり、「電子書籍はリフロー型で作るのが当たり前」を前提にしているよ、というメッセージでもあります(後付けの理由じゃないですよー。そして、コミックや絵画系の書籍のようにフィックス型の方がユーザーにとって読みやすい場合も多々あるので、決してフィックスを軽んじてないですよー、と追記しておきます(小心者))

【ざっくり解説】リフロー型
端末の画面の大きさ、文字サイズの設定に合わせてフィットするように制作された電子書籍のとこです。

リフロー型表示のイメージ図
リフロー型電子書籍で文字を表示させたときのイメージ図
画面が小さかったり文字が大きかったりすると、表示されなかった文字は次の表示(ページ)に送られます


文字を拡大・縮小すると、表示される文字数が自動的に変更されます。
実用書、ビジネス書、小説などなど・・・文字がメインの書籍はリフロー型が多いです(というか、100%リフローであってほしい)。

加えて、当社ではソースコードが多く含まれたプログラミング書やIT書籍、またデザイン性の高い自己啓発書やMOOK、レイアウトが複雑な技術系雑誌などもリフロー型で制作しています。

リフロー型での制作をメインとしているので尚更、電子書籍だからこそできることがたくさんあり、可能性に満ちている業界だと思っているのは決して誇張ではないです!
紙書籍がこれまで築き上げてきた書籍の価値、本は知識の具現化だということ、小さな頃から本に親しむことで知識のみならず、豊かな人間性を育むことなど、何にも代え難い役割を、電子書籍も同じく担い、そしてひとつのコンテンツで誰もが不自由なく使えるところまで昇華させていきたいと思っています。

「可能性」を実現させていく中で、最も現実的、そして早くスタンダードにさせるべきと思うものの一つが、音声読み上げです。
このHPでも2回、ちょこまかちょこまかと音声読み上げについて触れていたりします。
読書体験、その手段の拡がり:読み上げ機能)(数式を読み上げてもらおうじゃないか(MathMLからのちょっとした派生記事)

今の状態(配信されている電子書籍や販売されている端末)でも音声読み上げに対応できていますし、より聴きやすく誤読がないツールとして(人の声ですもんね!)オーディオブックが浸透してきたように思います・・・普段からこの手の話題をしていると、大変普及している気がしてしまうのですが、実際のところはどうでしょう。
仕事を離れての身近なところでは、新型ウイルス騒ぎで学校がお休みになっていた頃、休校支援として音声付き電子書籍を使って英語学習をした、という話を聞いたりしていましたが。

さてさて、本を読み上げる機能やサービス・アプリがあってとても便利ですが、本当に必要な人達に普及しているかと考えたときに、即答でイエスとは言い難いように思います。

アクセシビリティの面から音声読み上げは期待されていますが、どちらかというと、書かれている文字を「読む」ことに難のない人にとって、より便利になるように、またはエンターテインメントとして楽しめるように進化しているような感覚です。

――作業をしながら耳で読書という選択肢が増えた
――個人の好みの声で好きな本を聴けるように、オーディオブックのラインナップが豊富になった
――AIの音声も滑らかになり、耳に突っかかるような感覚が少なくなってきた
*電子書籍の読み上げに特化したものではないですが、もっと広く考えると、キュートなキャラクターが活躍する合成音声ソフトがありますね。
ボイスロイドには疎くて(すみません(人ω<`;))、電子書籍の読み上げ機能に注目するようになってからやっと調べ始めたのですが、実はキャラクターとして目にしたことがある子達が何人もいて・・・もっと早く注目していれば・・・と驚いているところです。

**話題としては無関係になりますが、ボーカロイドでは巡音さんのビジュアルが最高に好きです、そしてVOYAKILOIDというセンスはもはや尊敬しかなく、弱音さんも愛しています。

さて、好きなものの方に話題が流れるとロクなことにならないのが広報スタッフseri氏の悪癖(単純に記事のゴールが無限に遠のく、という意味で)なので、軌道修正をします。

読書に難はないけれど、折角だからもっと便利に使いたい、忙しくて読んでいる時間がないからながら読みができるようにしたい、といった事情や理由ももちろん軽んじられるものではありません。
人それぞれ書籍とのかかわりを色々と楽しみながら、そういった活動の中から更に良い活用方法が見つかっていくものだと思いますし。

ただ、何らかの事情で「読む」ことができない人達が、できる人達と同じ情報に触れ、得る情報量も差がないようになってきているだろうか、と思うとまだまだこれからという気がします。

機器側の設定で読み上げ機能をオンにすれば対応できるものがたくさんありますし、電子書籍データも読み上げ機能に対応できているのですが、機器の設定がそもそも複雑ではないか、操作は楽なのか?
電子書籍データは、「読み上げ対応用に作った」というより、「普通に作ったら読み上げ対応になっていた」という感覚に近いのが正直なところだと思います。

高性能な読み上げ機能を楽しむ、キャラクターの声でオーディオブックの世界を堪能する、というのとは別で、途切れたり止まったり読み飛ばされたりしない設定を整えた電子書籍の制作が必要なのではと、いま改めて思います。

そこで、具体的にどのように電子書籍制作をするのが良いのか、総務省の「情報バリアフリー環境の整備」部分を確認してみました。

上記HPの「音声読み上げによるアクセシビリティに対応した電子書籍制作ガイドライン(平成27年6月)」というPDFがとても役立ちます PDFのアイコン

大きく3つの章(話題)に分かれ、その中で節項が細分化されています。
音声ファイル付きEPUBの作り方、音声データと文字を同期させる方法(図表付き)などが詳しく書かれており、発音情報を埋め込む方法といったところも、しっかりと指標を記して頂いているのに検証したことがなかったな、と振り返りながらチェックしていきました。


音声読み上げのために必要なメタデータ
リーダー側に求められる機能
読み上げ指定方法
音声用の校正記号

なども記載されているので、今までどうも読み上げられた内容がおかしいと感じてきた部分、ポーズの位置といったところも実際にガイドラインの通りに記述して試してみようと思います。

雑談中の雑談ですが、ガイドラインに使われている例文、「A級戦犯に指定され服毒自殺した(例文の中の一部です)」って、物騒過ぎやしないか・・・もっと穏やかな例文があってもよさそうな。

ガイドラインを軸に進めてみましたら、新しい記事としてお伝えしますね(*‘▽’)

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